2024.08.06
コラム
駐車場建築
地震・津波・水害に強い!災害対策としての立体駐車場
※このコラムには東日本大震災の津波被害に関する画像等が含まれています
自走式立体駐車場は、日常では多くの車を駐車できる施設として使用されていますが、地震や津波に対する耐久性があることから、災害時には避難場所や物資保管場所として活用される重要な施設になっています。そのため、自治体と協定を結び、災害対策に貢献することが今後ますます期待されています。
今回は、災害対策としての自走式立体駐車場について紹介します。
災害に強い自走式立体駐車場
東日本大震災では、地震による直接の建物被害もありましたが、津波による被害が圧倒的に大きく、この災害を受けて、耐震だけでなく、津波対策の重要性も改めて認識されるようになりました。国土交通大臣認定の自走式立体駐車場は火災発生時のフラッシュオーバー防止のために外壁がない構造になっていることもあり、巨大津波の力を受け流すことができました。そのため、巨大地震や津波によって部分的に損傷したり、一部が倒壊したりするケースはありましたが、完全に倒壊した例はそれほど多くなかったとされています。
東日本大震災の実績
2011年の東日本大震災では、仙台や石巻などの沿岸地域が大きな被害を受けました。しかし、その中で自走式立体駐車場は高床式構造や水抜き構造が功を奏し、大きな被害を免れることができました。
また、これらの駐車場は避難場所としても活用され、特に仙台や石巻の事例では、立体駐車場が多くの住民の命と車両を守り、避難所としての役割も果たしました。また、簡易型人工地盤としても有効で、震災後の復旧活動において重要な拠点となり、救援物資の集積や配布を行う防災拠点としても活用されました。東日本大震災の事例からも分かるように、自走式立体駐車場は災害対策において重要なインフラであり、今後もその役割はますます重要になってきています。
災害支援活動における自治体との協定
福井市は大雨時に市民の避難場所として立体駐車場を開放するため、市内のパチンコ店を運営する遊技事業者4社と災害時の支援活動に関する協定を締結しました。これは県内自治体で初めての取り組みです。
参加事業者: クァトロブーム、北陸エンタープライズ、マルハン福井店、東新産業の4社
対象駐車場: 計5店舗の立体駐車場の2階以上
収容可能台数: 1327台
避難者への提供: トイレや水などの提供(可能な範囲で)
協定期間: 来年3月まで(1年ごとに更新)
立体駐車場は車に乗ったまま避難できるという利点があり、市のハザードマップで1000年に1度の大雨で浸水するとされているエリアのパチンコ店が協力しています。
静岡市では、藤枝市の総合アミューズメント事業を展開する新日邦と協定を結び、大雨などの水害時に新日邦が運営する静岡市内のパチンコ店の立体駐車場を市民の車の避難場所として提供する取り組みが行われています。
埼玉県寄居町では、オータと協定を結び、同社が運営する「サテライト花園寄居」の立体駐車場を災害時に車中泊場として町民に開放することになっています。この駐車場は、台風や大雨などの災害の際に分散避難を支援するために活用される予定です。
佐賀県は、佐賀県遊技業協同組合(佐賀県遊協)と協定を結び、災害時に自家用車の避難先として立体駐車場を無償で提供することを決定しています。この協定により、最大15,000台分の駐車スペースが災害時に利用可能となり、県が正式に要請する形での駐車場開放が行われます。
このように、立体駐車場を避難場所とする災害協定を結ぶ自治体が増えてきています。
病院の機能を支える立体駐車場
自走式立体駐車場は避難場所や災害拠点としての機能だけでなく、医療現場の補助としても期待されています。災害発生時には、屋根付きで開けた平面のスペースがあるためトリアージスペースとして活用でき、シートや鋼板製の仮設間仕切り壁を設置することで、避難場所や仮設の診察・検温施設として活用することができます。
より災害に強い立体駐車場にしていくために
自走式立体駐車場は上記でも述べたように避難場所や災害活動拠点などに期待されていますが、より災害に強い立体駐車場としての機能を高めるためには、トイレの設置や水分・食料や毛布などの備蓄品の設置が考えられます。また、太陽光パネルを設置することで駐車場で使用する電力を確保し、被災車に対して電源の供給も可能になります。
さいごに
立体駐車場は、地震や津波などの大規模災害時にも地域住民の避難拠点や仮設避難所としての利用が可能で、特に津波襲来時には駐車場の最上階が高所避難場所として機能します。さらに、駐車場に電源設備や非常食、飲料水を備えることで、地域の災害拠点として重要な役割を果たすことができます。
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